中小企業経営者必見!「ビジネスと人権」は他人事ではない

「ビジネスと人権」という言葉を聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?

「国際的な大企業が取り組む話だろう」
「うちのような中小企業には関係ない」

そう思っていませんか?

しかし、それは大きな誤解です。今や「ビジネスと人権」は、企業の規模にかかわらず、すべての企業にとって無視できないテーマとなっています。特に、サプライチェーンの一部を担う中小企業にとっては、重要な経営リスクの一つなのです。

このコラムでは、中小企業がなぜ「ビジネスと人権」に取り組むべきなのか、そして具体的に何をすればいいのかを、わかりやすく解説します。

目次

「ビジネスと人権」とは何か?

令和2年に「ビジネスと人権」に関する行動計画が策定されました。これは、企業による人権尊重の必要性について国際的な関心が高まる中で、日本政府が取り組むべき施策を示したものです。

「ビジネスと人権」とは、企業活動が人々の人権に与える影響について、企業が責任を持って対処するという考え方です。

人権とは、すべての人々が生まれながらに持っている普遍的な権利であり、差別なく尊重されるべきものです。具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 労働者の権利:強制労働の禁止、児童労働の禁止、安全な労働環境、適切な賃金など
  • 顧客の権利:製品・サービスの安全性、個人情報の保護など
  • 地域社会の権利:環境破壊の防止、先住民族の土地の権利など

企業は、事業活動を通じて、意図せず人権侵害を引き起こしてしまう可能性があります。例えば、下請け企業での過酷な労働環境、製造過程での環境汚染などがこれにあたります。

「ビジネスと人権」への取り組みは、こうした人権侵害を未然に防ぎ、もし起きてしまった場合に適切に対応するためのものです。

  • 直接的な人権侵害の例
    例えば、労働者の長時間労働やハラスメントは身近な問題といえます。他にも、環境汚染や地域住民の健康被害、サプライチェーンにおける強制労働や児童労働などが挙げられます。
  • 間接的な人権侵害の例
    企業は、人権を侵害する第三者に対して、協力や支援、黙認や無関心を示すことで、間接的に人権を侵害する可能性もあります。
    例えば、人権を無視した国家や軍事勢力との取引や投資、人種や性差別を軽視する企業との提携や広告などが挙げられます。

なぜ中小企業が「ビジネスと人権」に取り組むべきなのか?

1. 法的・規制的リスク

世界的に人権尊重を企業に求める動きが加速しています。海外と取引がある場合、取引先の国で定められた人権関連法に違反すると、事業停止や多額の罰金が課される可能性があります。

2. サプライチェーンからの要求

大企業は、サプライチェーン全体で人権に配慮することを取引先に求めるようになっています。もし御社が、取引先から人権デュー・ディリジェンス(人権に関する調査)の要請に応じられない場合、取引を停止されるリスクがあります。

3. 企業価値の向上

「人権に配慮している企業」というイメージは、顧客、投資家、そして求職者から信頼を得る上で大きな武器となります。これは、優秀な人材の確保や、新たなビジネスチャンスの獲得につながります。

「ビジネスと人権」に取り組むための3つのステップ

ステップ1: 人権方針の策定

まずは、会社として人権を尊重する姿勢を明確に示す「人権方針」を策定しましょう。この方針には、ハラスメント防止、労働環境の改善、多様性の尊重などが含まれます。策定した方針は、社内外に公開することが重要です。

ステップ2: 人権デュー・ディリジェンスの実施

自社の事業活動が人権に与える影響を特定し、評価するプロセスです。具体的には、ハラスメントや長時間労働など、自社に潜在する人権リスクを洗い出します。必要に応じて、従業員へのアンケートやヒアリングを行うことも有効です。

ステップ3: 救済措置の提供

もし人権侵害が起きてしまった場合に備え、従業員が安心して相談できる窓口を設置しましょう。外部の弁護士に相談窓口の設置を依頼することで、従業員の信頼性を高め、適切な解決を図ることができます。

弁護士に相談するメリット

「難しそう」「何から手をつければいいかわからない」と感じたら、ぜひ弁護士にご相談ください。

弁護士は、御社の状況に合わせて、以下のようなサポートを提供できます。

  • 人権方針の策定支援:法的な観点から、方針の内容を適切にアドバイスします。
  • 人権デュー・ディリジェンスのサポート:リスクの洗い出しを客観的に行い、必要な対策を提案します。
  • 外部相談窓口の設置:従業員が安心して相談できる窓口を、弁護士が担います。

「ビジネスと人権」への取り組みは、企業の未来を左右する重要な経営戦略です。

法的なリスクを回避し、持続可能な経営を実現するためにも、専門家である弁護士の力を借りて、一歩踏み出してみませんか?

この記事を書いた人

弁護士のアバター 弁護士 弁護士 大﨑美生

東京弁護士会 
後楽園フィリア法律事務所
代表弁護士 大﨑美生

東京都文京区小石川/春日で弁護士をしています。
個人の方向けの注力分野は、「離婚・相続・労働問題」です。親切・丁寧・迅速・そして圧倒的な成果の獲得に自信があります。

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