財産分与の法的意義と知っておきたいポイント

目次

▶1 財産分与の根拠規定と性質 

財産分与の根拠規定は、民法768条1項と771条です。

民法768条1項は、夫婦の一方が他方に対して、婚姻中に形成した財産の分与を求めることができると定めています。
民法771条は、協議離婚の場合にも財産分与の規定が準用されると定めています。

財産分与は、単なる財産の分割ではなく、夫婦の婚姻関係の清算と離婚後の生活の保障を目的とする制度です。そのため、財産分与請求権は、抽象的で一身専属的な権利とされています

抽象的であるとは、財産分与の具体的な額や方法が協議や裁判所の処分によって決まるまでは、具体的な請求権とはならないということです。

一身専属的であるとは、財産分与請求権は、当事者しか行使できないということです。他人に譲渡したり、差し押さえの対象となったりすることはできません。

▶2 財産分与の要素と意味 

財産分与には、清算的要素、扶養的要素、慰謝料的要素の3つの要素があります。それぞれの要素の意味と影響について見ていきましょう。

清算的要素とは

  • 夫婦が婚姻中に協力して形成した財産を分けることです。この財産は、夫婦のどちらの名義であっても、婚姻中に協力して形成したものであれば対象となります。たとえば、夫が会社員として働いて得た給料やボーナス、妻が専業主婦として家事や育児に尽くしたことによる貢献度などが考慮されます。清算的要素は、財産分与の中核となる要素です。

扶養的要素とは

  • 離婚後における他方配偶者の生計の維持を目的とすることです。この要素は、離婚によって生じる経済的な不利益を補償する意味があります。たとえば、離婚後に就職や再婚が困難な配偶者や、子どもの養育に専念する配偶者に対して、財産分与の額を増額することができます。扶養的要素は、当事者の意向によって考慮するかどうかが異なります。

慰謝料的要素とは

  • 有責配偶者に対する慰謝料請求としての意味です。この要素は、離婚の原因となった不貞行為や暴力などによって精神的苦痛を受けた配偶者に対して、財産分与の額を増額することができます。慰謝料的要素は、財産分与とは別に民法709条の不法行為に基づく慰謝料請求権として行使することが可能なため、必ずしも財産分与に加味する必要はありません。慰謝料的要素も、当事者の意向によって考慮するかどうかが異なります。

▶3 財産分与の対象となる財産 

財産分与の対象となる財産は、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産です。しかし、すべての財産が分与の対象となるわけではありません。

財産分与の対象となる財産とならない財産について、具体的に見ていきましょう。

財産分与の対象となる財産とは 

  • 夫婦のどちらの名義であっても、婚姻中に得た収入や貯蓄、不動産や株式などの有価証券、自動車や家具などの動産、退職金や年金などの将来受け取る権利などが含まれます。

財産分与の対象とならない財産とは

  • これを特有財産といいます。婚姻中に夫婦の協力によって得た財産の額ではない財産です。
  • これには、婚姻前に既に持っていた財産や、婚姻中に第三者から相続や贈与などによって得た財産、婚姻中に夫婦の協力によらずに独力で得た財産などが含まれます。ただし、これらの財産のうち、婚姻中に夫婦の共同生活のために使用したり、夫婦の協力によって増加したりしたものは、分与の対象となることがあります。

▶4 まとめ

財産分与は、離婚に伴って生じる夫婦の財産の分配の問題です。財産分与は、民法に基づく権利ですが、その内容や方法は夫婦間の協議に委ねられています。協議ができない場合は、家庭裁判所に処分を求めることができますが、その際には裁判所の判断に従わなければなりません。

また、財産分与の対象となる財産とならない財産についても、具体的に把握することが必要です。

財産分与は、離婚における重要な問題です。離婚を考えている方や、離婚した方は、財産分与に関する法律的な知識を身につけることで、自分の権利を守ることができます。財産分与に関する相談や問題がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

この記事を書いた人

東京弁護士会 
後楽園フィリア法律事務所
代表弁護士 大﨑美生

東京都文京区小石川/春日で弁護士をしています。
個人の方向けの注力分野は、「男女問題・離婚・相続・労働問題」です。親切・丁寧・迅速・そして圧倒的な成果の獲得に自信があります。オンラインで全国各地のご対応可能です。

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