改正民法施行まで、いよいよ秒読み段階となりました。
すでにニュース等で報じられている通り、施行日は2026年4月1日に決定しています。
「結局、自分の場合はどうなるの?」「何を共同で決めるの?」「教育・転居は?」など…
そんな不安を抱える方のために、今回は施行直前の疑問にQ&A形式で弁護士がお答えします。
共同親権の全体像について詳しくはこちらの記事もご覧ください
【2026年4月1日施行】共同親権はいつから?離婚後の影響と民法改正を弁護士が解説
共同親権の【離婚後の親権変更手続き】について詳しくはこちらの記事もご覧ください
【民法改正】共同親権導入で「親権者変更」は可能?条文や子供の年齢要件を弁護士が解説
[基本・手続き編] いつから?私の場合はどうなる?
Q1. 施行日(2026年4月)より前に離婚すれば、「単独親権」ですか?
A. はい。施行日前の離婚であれば、現行法が適用され、必ず「単独親権」となります。
現在(施行前)の民法では、離婚後の親権について「父母の一方を親権者と定めなければならない」とされています。
施行日前に離婚届が受理されれば、まずは単独親権で確定します。「話し合いが難航しそうで、共同親権を強要されるのが怖い」という場合は、施行日前に離婚を成立させることが一つの選択肢です。
Q2. すでに離婚済み(単独親権)です。勝手に共同親権に変えられることはありますか?
A. 自動的に変わることはありません。
施行日より前に成立した離婚については、そのまま単独親権が継続します。共同親権に変更するには、父母の協議、または家庭裁判所への申し立て(親権者変更申立て)が必要です。
※親権変更の条件や裁判所の判断基準については、別記事をご覧ください
【民法改正】共同親権導入で「親権者変更」は可能?条文や子供の年齢要件を弁護士が解説
[生活・ルール編] 転校・手術・毎日の暮らし
Q3. 共同親権になったら、すべての決定に相手の同意が必要ですか?
A. いいえ。「日常の行為」や「緊急の用事」は一人(単独)で決められます。
「いちいち元配偶者に連絡したくない」という不安に対し、改正法は現実的な運用ルールを定めています。
【改正民法 第824条の2】(親権の行使)
1 親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う。
一 (略)
二 (略)
三 子の利益のため急迫の事情があるとき。
2 父母は、その双方が親権者であるときであっても、前項本文の規定にかかわらず、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。
- 日常の行為: 毎日の食事、習い事の選択、期限の迫った学校提出物、一般的なワクチン接種など。これらは同居親の判断で進めて問題ありません。
- 急迫の事情: 期限の迫った入学手続き、緊急手術の同意など。これらも相手の同意を待たずに行えます。
逆に言えば、留学、緊急でない手術などの重要事項は、単独で行うと違法となる可能性があるため注意が必要です。
[DV・拒否編] 嫌な相手とも共同親権?
Q4. DVがあった相手でも、共同親権を強制されますか?
A. いいえ。DVや虐待のおそれがある場合は、裁判所は必ず「単独親権」としなければなりません。
改正法では、共同親権は「選択肢」であり、不適切なケースでは排除するよう明記されています。
【改正民法 第819条第7項】(裁判離婚等の親権者の指定)
(前略)…次に掲げる事情があるため、父母が共同して親権を行うことが困難であると認めるときは、裁判所は、父母の一方を親権者と定めなければならない。
一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるとき。
二 父母の一方が他方から暴力を受けるおそれがあること(中略)その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認めるとき。
「子の心身に害悪(虐待など)」や「他方から暴力(DV)」がある場合は、裁判所は単独親権を命じる義務があります。
したがって、DVの証拠(診断書、警察への相談記録、保護命令など)を今のうちに確保しておくことが重要です。
[お金・手当編] 養育費と行政手当
Q5. 養育費の取り決めをせずに離婚してしまいました。請求できますか?
A. 改正法により、取り決めがなくても最低限の金額(法定養育費)を請求できるようになります。
【改正民法 第766条の3】(子の監護に要する費用の分担の定めがない場合の特例)
父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく協議上の離婚をした場合には、父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うものは、他の一方に対し、(中略)その子の監護に要する費用として法務省令で定める額の支払を請求することができる。
これまでは「取り決め」がなければ強制執行などが困難でしたが、改正後は法律上当然に発生する義務として、最低限の金額を請求できるようになります。
Q6. 児童手当や扶養控除はどうなりますか?
A. 基本的には「実際に同居・監護している親」が対象となる見込みです。
共同親権であっても、税制上の扶養控除や児童手当の受給者は、原則として一人です。通常は、子どもと同居して生計を維持している親(監護者)が受給することになります。
5. [再婚・養子縁組編] 新しい再婚相手との縁組、元配偶者の許可は必要?
改正法において、実務上の影響が特に大きいのが「再婚時の養子縁組」です。お子様の年齢によってルールが異なります。
Q7. 再婚して、新しいパートナーと子どもが養子縁組をしました。共同親権を選択した場合、親権者は誰になりますか?
A. 「再婚した実親」と「養親(新パートナー)」のふたりになります。
もし離婚後に元配偶者と「共同親権」になっていたとしても、再婚相手との養子縁組が成立すれば、親権者は「実親(あなた)+養親(再婚相手)」の共同親権となります。この場合、元配偶者(別居親)の親権は消滅します。
Q8. 【15歳未満の場合】共同親権だと、元配偶者に内緒で養子縁組することはできますか?
A. できません。元配偶者の「同意」が必要になります。
従来(単独親権)と異なる点です。
子が15歳未満の場合、養子縁組には法定代理人(親権者)による承諾(代諾)が必要です。共同親権下では、元配偶者も親権者であるため、養子縁組の承諾には元配偶者の同意も必要となります。
【改正民法 第797条】(15歳未満の縁組の代諾)
1 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
もし元配偶者が反対した場合でも、家庭裁判所に申し立てを行い、「縁組の承諾をするについての同意に代わる許可」を得れば縁組が可能です(改正民法797条4項)。
Q9. 【15歳以上の場合】15歳以上なら、元配偶者の同意は不要ですか?
A. はい。お子様本人の意思で養子縁組ができ、元配偶者の同意は不要です。
これは現行民法から変わらないルールです。 民法では「15歳未満」の場合に限って親権者による代わりの承諾(代諾)を認めており、裏を返せば、15歳に達した子は自分の意思で養子縁組を決定できると定められています。
(現行・改正共通)【民法 第797条第1項】 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。
つまり、15歳以上のお子様が養子縁組届に自ら署名すれば、元配偶者(別居親)が反対していても、法的に養子縁組は成立します。 ただし、縁組が成立すると元配偶者の親権は失われるため、事後のトラブルを防ぐために慎重な対応が求められることもあります。
弁護士からのメッセージ:その「合意」が、将来のあなたとお子様を守ります
2026年の共同親権導入は、これまでの日本の離婚実務における極めて大きな転換点です。しかし、制度が変わるからといって、すべての家庭が一律に同じルールに従わなければならないわけではありません。
それぞれの家庭には、それぞれの事情があります。 お子様の年齢、性格、これまでの養育環境、そして父母の関係性──。これらを無視して、法律論だけで杓子定規に離婚条件を決めてしまうことは大変危険です。
「なんとなく」の合意が、数年後に大きな紛争の火種になるかもしれません。
曖昧なままで離婚した後、「進学先が決まらない」「急な手術の同意が取れない」といったトラブルに巻き込まれないためには、しっかりとした「離婚協議書」を作成しておくことが不可欠です。それは、あなた自身の平穏な生活と、何より大切なお子様の未来を守ることにもなります。
当事務所では、改正民法の詳細な規定を踏まえ、あなたの家庭の実情に合わせた「紛争化しないための離婚協議書」の作成をサポートいたします。 一人で悩まず、まずは一度ご相談ください。私たちと一緒に、安心できる未来のルールを作りましょう。
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