婚姻費用の法的意味と知っておきたいポイント

2024年07月17日

夫婦が別居するとき、どのように婚姻費用を分担するべきかという問題が生じます。婚姻費用とは婚姻生活によって生じる一切の費用のことです。

例えば、衣食住にかかる費用、子供の教育費、医療費、交際費など。

婚姻費用の分担は、民法760条によって規定されていますが、その内容は抽象的で、具体的な金額や割合は夫婦間の協議や裁判所の判断に委ねられています。

別居中の婚姻費用分担について、法律的な知識と注意点を説明します。

▶1 分担の法的根拠と意義

婚姻費用分担の法的根拠は、民法760条です。この条文は以下のように定めています。

(婚姻費用の分担)

第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

この条文により、夫婦は婚姻費用を分担する義務を負うことになります。

この義務は、夫婦の一方が婚姻費用を負担しない場合、他方が婚姻費用を請求する権利を有することを意味します。

この権利は、婚姻費用分担請求権と呼ばれます。

婚姻費用分担義務は、夫婦の一方が他方に対して、相手と同等の生活をさせる義務です。

この義務は、生活保持義務とも呼ばれます。

生活保持義務は、夫婦の結合という社会的な事実に基づく義務であり、婚姻が継続している限り、別居していても消滅しません

しかし、生活保持義務は、夫婦間の協議、調停ないし審判によって具体的な金額が決定されて初めて具体的な請求権となります。つまり、婚姻費用分担請求権は、取り決めがないと意味のない抽象的な権利であると言えます。

▶2 婚姻費用分担の具体的な方法と注意点

婚姻費用分担の具体的な方法は、夫婦間の協議によって決めることができます。

協議が成立しない場合は、調停や審判を申し立てることができます。

調停や審判では、夫婦の収入や資産、子供の有無や年齢、生活水準や必要経費など、一切の事情を考慮して、婚姻費用の額や割合を決めます。

一般的には、収入の多い方が収入の少ない方に対して、収入の一定割合を支払うという方法が採られますが、必ずしもそうとは限りません。

婚姻費用分担の注意点としては、以下のようなものがあります。

  • 婚姻費用の請求者に婚姻関係の破綻や別居について有責性が認められる場合には、婚姻費用の請求をすることが信義則に反し、認められないことがあります。
  • ただし、その場合でも、請求者が子供を監護している場合には、子の監護費用分については認められています。
  • 義務者と請求者双方に婚姻関係の破綻や別居について有責性がある場合には、有責割合によって婚姻費用の分担額が決められます。
  • 婚姻費用分担の取り決めは、夫婦の事情によって変更することができます。
  • 変更する場合には、再び夫婦間の協議や調停ないし審判が必要です。一方的に支払いを停止したり、減額したりすることはできません。

▶3 おわりに 

別居中の婚姻費用分担について、法律的な知識と注意点を説明しました。

婚姻費用分担は、婚姻が継続している限り、夫婦の双方に課せられる義務ですが、その内容は夫婦間の協議や裁判所の判断によって決まります。

別居中の婚姻費用分担に関しては、自分の権利や義務を正しく理解し、適切な方法で対処することが重要です。