経営者・個人事業主の離婚の注意点

経営者・個人事業主の方の離婚は、会社員の方の離婚とは異なる注意点が多くあります。特に、婚姻費用や養育費の算定基礎となる収入の認定や、財産分与を算定する場面においては、画一的な判断になじまず、専門的な知識と豊富な経験が必要となります。

目次

婚姻費用・養育費の算定における注意点

収入が一定でない

経営者・個人事業主の方の収入は、業績によって大きく変動することがあります。

そのため、直近の収入だけでなく、過去数年間の収入も考慮し、平均値を算出する必要があるケースがあります。

収入を操作しやすい

経営者・個人事業主の方は、帳簿操作や経費計上などによって、意図的に収入を減額するケースがあります。

確定申告書や帳簿を精査し、専門知識や経験によって、表面上の収入だけでなく、実質的な収入を把握することが重要です。

参考裁判例【令和4年5月13日審判 宇都宮家庭裁判所】
当事者の収入ではなく、一方当事者(養育費請求者)の再婚相手の収入認定が問題となったケースです。
養育費請求者が、再婚相手の収入資料の提出を拒否したところ、裁判所は、同人が精神科の開業医であることに鑑み、少なくとも算定表の上限の金額の営業所得を得ていると推認して養育費を算定しました。

高額所得者の場合、算定表を利用できるケースとできないケースがある

算定表の上限を超える高額所得者の婚姻費用と養育費の算定は特に注意が必要です。

ア 婚姻費用の算定

高額所得者の場合、婚姻費用は、算定表をそのまま利用するケースと、基礎収入割合を修正して算定する方法、同居中の生活レベルから算定する方法等、複数の算定方法があります。

いずれの方法でも、養育費と異なり、金額に上限を設けるのは一般的ではありません。

イ 養育費の算定

養育費の場合、婚姻費用と異なり、収入を算定表の上限である2000万円を上限額とすることが一般的です。

ただし、生活実態や子の習い事等に鑑みて、上限となる養育費の額に加算することがあります。

いずれの場合も、個別のケースに応じて適切な算定方法を選択し、算出された養育費または婚姻費用に加算・減額すべき要素がないかを判断する必要があります。

その判断にあたっては、過去の裁判例を参考にします。類似裁判例がない場合は、各家庭の様々な考慮要素に基づき、当該ケースにおいて公平な計算方法や額になっているかという視点が必要となり、裁判になればそれを具体的に主張していくことになります。

財産分与の算定における注意点

財産分与の対象財産の複雑性

経営者・個人事業主の方の場合、どの財産が財産分与の対象となるか問題になるケースが多いです。

原則として、財産の名義や用途によって判断しますが、例外も存在します。

例えば、以下のような会社名義の財産は財産分与の対象にはならないのが原則です。

  • 会社名義の不動産
  • 法人の銀行口座の預金
  • 個人事業主の事業用の車両、備品

ただし、以下のような状況では、例外的に会社名義の財産が財産分与の対象になる可能性があります。

  • 会社と個人の財産の区別が曖昧な場合
  • 法人格否認の法理が適用されるようなケース

財産分与の対象財産の評価の困難性

経営者の配偶者が持つ「会社株式」を財産分与の対象とすることができる場合があります。配偶者の持ち株の半分を現物分割してもらうことは現実的ではありません。

株式の評価額を算出し、その相当額を現金で受け取る方法が一般的です。

公開会社であれば株式評価は簡単ですが、非公開会社の場合、専門的知識がなければその評価は困難ですので、弁護士に依頼されることをおすすめします。

まとめ

経営者・個人事業主の方の離婚は、収入や財産の複雑さから、慎重な対応が求められます。

適切な婚姻費用・養育費の算定、公平な財産分与を行うためには、専門的な知識と経験が不可欠です。

このようなケースでは弁護士のサポートが不可欠なケースといえます。

この記事を書いた人

東京弁護士会 
後楽園フィリア法律事務所
代表弁護士 大﨑美生

東京都文京区小石川/春日で弁護士をしています。
個人の方向けの注力分野は、「男女問題・離婚・相続・労働問題」です。親切・丁寧・迅速・そして圧倒的な成果の獲得に自信があります。オンラインで全国各地のご対応可能です。

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